
「棚卸システムとはどういうものか。」
「システムの導入を検討してるけど、十分な費用対効果を得られるだろうか。」
在庫をひとつひとつ数えていく棚卸しは、企業にとっても従業員にとっても負担が大きいですよね。
手作業による非効率さや、ヒューマンエラーの多さに悩み、システム導入が気になっている人も多いでしょう。
棚卸システムとは、デジタル技術によって、棚卸しの一部工程を自動化できるソフトウェアやツールのことです。
自動化により、棚卸しにかかる時間の大幅な短縮と、人件費などのコストカットを期待できます。また、手作業をなくすことで、ヒューマンエラーも減らせるでしょう。
「棚卸システム」というと、大規模倉庫向けで高額な費用が必要、という大掛かりなイメージがあると思います。
しかし、近年はさまざまな種類の棚卸システムが展開されるようになり、月額約1万円~の低価格サービスも広く普及するようになりました。
シンプルな機能だけで問題なければ、小規模事業などでも比較的導入しやすいでしょう。
とはいえ、導入コストばかり意識していると、作業効率が期待するほど改善されなかったりするおそれがあります。
棚卸システムの費用対効果を最大化するためには、各システムの特徴をよく比較し、自社に合ったシステムを選ぶことが大切です。
【本記事で分かること】
・棚卸システムとはどのようなものか・何ができるのか |
本記事を読めば、棚卸システムについて理解し、導入するかどうかを判断できるようになります。
そして、棚卸システムの種類と特徴を理解し、自社に合ったものが分かるようにもなります。
ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
目次
1.棚卸システムとは
棚卸システムとは、デジタル技術によって、棚卸しの一部工程を自動化できるソフトウェアやツールのことです。
実際には「棚卸システム」というものは数少なく、「在庫管理システム」(または倉庫管理システム)の機能のひとつとして備わっているものがほとんどです。
一部、棚卸し専用のパッケージとして提供されている商品もあります。
棚卸システムは、一般的に「商品情報を読み取る機器」(ハンディターミナルなど)と「読み取ったデータを集計・照合するソフトウェア」の2つを組み合わせて使用します。
棚卸システムでできることは、大きく分けて下記の4つです。ただし、システムによっては対応していない場合もあるのでご注意ください。
【棚卸システムでできること】
(1)在庫リストの作成 |
2.棚卸システムの種類と機能
棚卸システムにはいくつか種類があり、それぞれできることや使用方法が異なります。
ここでは代表的な棚卸システムの種類とその機能、効果について紹介していきます。
【棚卸しのシステム3種類】
種類 | 棚卸し方法 |
バーコード読取式 | ハンディターミナルやスマートフォンでバーコード等を読み取り、数量を入力する |
RFIDタグ読取式 | 専用ハンディターミナルで、タグをつけた商品の情報と数量を、非接触で一括で読み取る |
重量センサー式 | 計量器で商品の重さを箱ごと計測し、数量を自動で割り出す |
※システムの詳細や選び方については、6.まずはシステム選びが大事!棚卸しを効率化できるおすすめ3種類で解説
2-1.バーコード読取式
バーコード読取式とは、ハンディターミナルかスマートフォンでバーコード等を読み取って、数えた数量を入力する方法です。
当方法の機能とその効果は下記のとおりです。
【バーコード読取式】
できること | 効率化の効果 |
バーコードをかざして商品情報を読み取る | ・棚卸現品票(または在庫リスト)とペンの準備と持ち歩きが不要 |
数量はハンディターミナルからシステムに転送できる | ・集計や手入力の作業が不要 |
データ上の在庫と差異があれば、システムでアラートが表示される | ・差異に気づきやすい |
当方法で効率化はだいぶ進められますが、数量は作業者が数えなければいけません。
2-2.RFIDタグ読取式
RFIDタグ読取式とは、専用ハンディターミナルで、タグをつけた商品の情報と数量を、非接触で一括で読み取る方法です。
当方法の機能とその効果は下記のとおりです。
【RFIDタグ読取式】
できること | 効率化の効果 |
一定距離内にあるタグの商品情報と数量を一括で読み取る | ・棚卸現品票(または在庫リスト)とペンの準備と持ち歩きが不要 |
数量はハンディターミナルからシステムに転送できる | 集計や手入力の作業が不要、転記ミスも防止 |
データ上の在庫と差異があれば、システムでアラートが表示される | 差異に気づきやすい |
当方法ならハンディターミナルで数量までも読み取れるので、棚卸しの作業を大幅に効率化できます。
2-3.重量センサー式
重量センサー式とは、計量器で商品の重さを箱ごと計測し、数量を自動で割り出す方法です。
当方法の機能とその効果は下記のとおりです。
【重量センサー式】
できること | 効率化の効果 |
計量器に商品を載せたり、取り出したりしたら、重さから数量が自動で算出される | ・棚卸し作業自体が不要 |
数量は計量器からシステムにリアルタイムで反映される | ・常に「在庫データ=実際の在庫数」で一致した状態 |
当方法なら、自動で常に棚卸しが行われている状態になり、棚卸し自体が大きく変わるでしょう。
3.棚卸システムの効果|作業効率化&ミス削減につながる!
前章で紹介したとおり、棚卸システムを導入することにより、従来手作業で行っていた棚卸しの作業を部分的に自動化できます。
そして、自動化により作業効率と正確性を大幅に高めることが期待できるでしょう。
【棚卸システム導入により期待できること】
・効率UP:作業時間と負担の大幅削減 |
システムによってどのように効率と正確性を高められるのか、システムを使用しない場合と比較したのでご覧ください。
【システム導入による棚卸し作業の変化】
システムなし | システムあり | システム導入による効果 | ||
バーコード読取式 | RFIDタグ読取式 | |||
事前準備 | エクセル等で棚卸しリストや棚卸現品票を作成 | 不要 | 作業時間50~80%カット | |
カウント作業 | 手作業でカウント | 手作業でカウント | 自動読取 | 作業時間0~90%カット |
数えた数量の記録 | 手書き | 手入力 | 不要 | 作業時間100%カット |
集計・データ入力 | エクセルに手入力 | システムに転送 | 作業時間100%カット |
3-1.事前準備でのシステム利用効果
従来のやり方だと、まずエクセルなどで棚卸しのための管理表を作成し、それからカウント作業に使う棚卸現品票(タグ)やリストを作成しなければいけませんでした。
しかし、システムを利用する場合、棚卸現品票やリストの作成は不要になります。
これにより、作業工程の50~80%をカットできるでしょう。
3-2.カウント作業でのシステム利用効果
従来のやり方だと、膨大な在庫の数をひとつひとつ数えていかなければいけません。時間がかなりかかるうえに、カウントミスも多くなります。
RFIDタグ読取式や重量センサー式のシステムなら一括で個数を自動読取できます。正確にカウントでき、時間も大幅に短縮できるでしょう。
ステムの種類によって効率化の差は大きいですが、作業工程を最大90%近くまでカットすることも可能です。
【実際の事例(RFIDタグ読取式)】
B社(自動認識ソリューション商品の製造・販売企業) 《導入前》 《導入後》 |
3-3.リスト・棚卸現品票への記入でのシステム利用効果
従来のやり方だと、在庫をカウントしたらその数をリストか棚卸現品票に記入する必要があります。
一方、システム利用ならカウントした個数が自動転送されるので、手書きで記入する必要がありません(※数量を機器に入力するタイプもあり)。
これにより、作業工程を丸ごと省くことができ、記入ミスもなくなります。
また、紙とペンを持たないため両手がふさがらず、負担なく作業を進められるでしょう。
【実際の事例(重量センサー式)】
B社(ポリエチレンの製造・販売) 《導入前》 《導入後》 |
3-4.集計・データ入力でのシステム利用効果
従来のやり方では、前節で記入したリストまたは棚卸現品票を集計・データ入力しなければいけません。
このとき、手書きで書かれたものを入力するため、読み間違いをしてしまうことが往々にして起こります。たとえば「7」と書いたつもりが、集計のときに「1」と読み間違えられてしまうのです。
システムの場合はデータを自動転送できるので、作業工程を丸ごと省けて、読取・転記ミスも起こりません。
【実際の事例(バーコード読取式)】
C社(研磨製品製造・販売) 《導入前》 《導入後》 |
4.棚卸システム導入・運用にかかる費用
前章で述べたとおり、棚卸しはシステムを導入することにより、効率と正確性を格段に向上させられます。
しかし、気になるのがシステム導入・運用にかかる費用ですよね。
システム費用は、オンプレミス型の場合は約50万円~300万円(一括)、クラウド型の場合は約1万円~20万円(月額制)が相場です。
【棚卸システムにかかる費用】
オンプレミス型の場合 | クラウド型の場合 |
約50万円~300万円 | 約1万円~20万円/月 |
オンプレミスとクラウドの違いについては、下記をご参照ください。
【オンプレミスとクラウドの違い】
サーバー | 費用 | 導入 | カスタマイズ | |
オンプレミス | 自社で構築 | 高め | 数ヶ月かかる | しやすい |
クラウド | インターネット上にあるサーバーを活用 | 低め | 数週間で導入できる | しづらい |
金額は、オンプレミスかクラウドだけでなく、システムの種類や内容によって大きく異なります。
最新技術を搭載したシステムは高額ですが、シンプルな機能だけでいいなら、1万円前後/月で利用できるものもあります。特に、小規模事業向けのアプリなどは低コストで利用できるでしょう。
利用料の負担は大きいですが、システムを活用することで、その分人件費を抑えることができます。
システム導入によるコストカットのシミュレーションを見てみましょう。
【人件費コストカットのシミュレーション】
《システム導入前》 《システム導入前》 |
上記のとおり、長期的に見ると、コストカットできる費用がシステム導入費用を上回ることも期待できます。
ただし、効率化の割合が低いと、システム費用のもとを取れない可能性もあります。
5.棚卸システムを導入したほうがいい企業
棚卸システム導入は、効率と正確性を向上できるものの、費用負担と運用までの手間ひまがかかります。
十分な費用対効果・時間対効果を得られる場合のみ、導入に踏み切るようにしましょう。
具体的には、下記2つの条件にあてはまる企業が、導入がおすすめです。
【棚卸システムを導入したほうがいい企業】
条件(1) | 条件(2) | |
下記いずれかの課題を抱え、改善していきたい | かつ | システム導入にかける予算・時間がある |
条件(1)にあてはまらない場合は、システム導入による十分な効果を得られない可能性が高いので、現段階での導入は見送りましょう。
5-1.条件(1-1)在庫数が多い(2,000品目以上)
在庫数が多い(商品数2,000品目以上)場合は、棚卸システムを導入することで、大幅な業務効率化を期待できます。
まず、数千~数万の在庫を手作業でひとつずつ数えていくのは、膨大な時間と労力がかかります。
一定距離内で一括で数えられるシステムを導入すれば、大幅な作業量カットを見込めるでしょう。
また、エクセルで棚卸しのリストを作っている場合、行または列が2,000以上を越えると、動作が遅くなり始めます。
在庫数が2,000品目以上ある場合、システムを活用しないと損が膨らむ一方なので、迷わずシステム導入するようにしましょう。
5-2.条件(1-2)作業時間が足りない
棚卸しの作業時間が足りないケースも、棚卸システムを導入することで、短時間で終わらせることが可能になります。
ここまで述べてきたとおり、システムの自動化により、作業時間の短縮と、集計や入力などの工程をカットを実現できます。
「人手が足りない」「在庫数が急増した」などの理由で、希望時間内に棚卸し作業を完了できなさそうな場合は、システムの導入を検討しましょう。
5-3.条件(1-3)ヒューマンエラーが多い
ヒューマンエラーが多い場合も、システムを活用することでミスを回避しやすくなります。
システム導入で手作業を減らすことにより、カウントミス・記入ミス・転記ミスが激減するので、帳簿上の在庫との差異が少なくなるでしょう。ミスが減ると、数え直しをする必要もないため、作業も早く終わります。
普段の入出庫・保管業務からシステムを活用することで、より棚卸しの精度を高められます。
5-4.条件(2)システム導入にかける予算・時間がある
システムを導入するためには、予算だけでなく運用までの時間も必要です。
システムを棚卸しに活用できるようなるまでには、下記工程を進めていかなければいけません。
【システムを棚卸しに活用するまでの流れ】
1.システムを選ぶ |
運用までかかる期間はシステムによりますが、早くても1~2カ月はかかります(クラウド型なら比較的早くに運用可能)。
今回の棚卸しまで時間がない場合は、次回以降で活用できるよう、計画的に進めるようにしましょう。
判断に迷ったらプロに無料相談がおすすめ |
棚卸しにシステムを活用すべきかどうか迷ったら、お気軽に当社にご相談ください。 システム導入をすべきか、どのシステムが合っているかは、自社では客観視できず、適切な判断は難しいものです。 在庫管理に詳しい専門家が、企業さまの商品や保管状況、悩み、要望をヒアリングし、最適な解決策を提示します。 「棚卸しをもっと簡単に、楽にしたい…」とお考えの方は、ぜひ一度お問合せください。 |
6.まずはシステム選びが大事!棚卸しを効率化できるおすすめ3種類
あらためて、棚卸しのシステムの種類と選び方について紹介していきます。
2章で紹介したとおり、システムにはいくつか種類があり、機能も大きく異なります。そのため、向いている業種や事業規模も変わってくるので、自社に適したシステム選びが重要です。
もし合っていないシステムを選んでしまうと、期待するほど効率化の効果を得られず、逆に混乱を招いたり、費用を無駄にしてしまったりするおそれがあります。
下表に、おすすめのシステム3種類についてまとめたので、各システムの特徴をよく理解し、選び方の参考にしてください。
【棚卸しを効率化できるおすすめシステム3種類】
棚卸し方法 | 効率化 | コスト | 運用までの時間 | 向いているケース | |
バーコード読取式 | バーコード等を読み取り、数量を入力する | △ | 安い | 短い | 小規模~中規模店舗・倉庫等である |
RFIDタグ読取式 | タグをつけた商品の情報と数量を、非接触で一括で読み取る | ◎ | 高 | 長い | 大規模店舗・倉庫等である |
重量センサー式 | 計量器で商品の重さを箱ごと計測し、数量を自動で割り出す | ◎ | 中~高 | 短い | 小さな商品を取り扱う |
それではひとつずつ、特徴や向いているケースについて見ていきましょう。
6-1.バーコード読取式システム
バーコード読取式システムの特徴は下表のとおりです。
【バーコード読取式システム】
棚卸し方法 | バーコード等を読み取って数量を入力し、在庫管理システムに送信する |
効率化 | △:数量は手作業でカウントするので、ほかの方法より劣る |
コスト | システム(オンプレミス型の場合):50万円~200万円 |
運用までの時間 | 短い:商品にすでにバーコードが貼ってあるなら、すぐに導入できる |
メリット | ・コストを抑えられる |
デメリット | ・数量は作業者がカウントしなければいけない |
向いているケース | ・在庫数量が多すぎない(小規模~中規模店舗・倉庫向け) |
6-1-1.どのようなシステムか
当方法は、ハンディターミナルかスマートフォンでバーコード等を読み取って数量を入力する方法です。
ハンディターミナルとは、バーコードや2次元コードなどの読取機能が搭載された小型のデータ収集機器です。
棚卸しの方法としては、下記のように進めていきます。
【バーコード読取式システムの棚卸し方法】
1.ハンディターミナルやスマートフォンで、商品に貼ってあるバーコードやQRコードを読み取る |
当方法では、手作業で数量を数えて数量を入力する必要があるので、完全に自動化というわけにはいきません。入力の場面でヒューマンエラーが発生するリスクもあります。
ただ、ほかの方法よりは低コストで、バーコードが貼ってあればすぐに導入できるので、比較的手軽に始めやすい方法と言えます。
6-1-2.メリット
当方法の主なメリットとしては下記が挙げられます。
【バーコード読取式システムのメリット】
・コストを抑えられる |
一番のメリットとしては、ほかの方法と比べ、低コストで利用できる点です。
オンプレミス型の場合は50万円~150万円、クラウド型の場合は5,000円~数万円/月で始められます。
スマートフォンで読み取る場合は、ハンディターミナルを購入する必要がないので、費用をさらに抑えることができます。
6-1-3.デメリット
当方法の主なデメリットとしては下記が挙げられます。
【バーコード読取式システムのデメリット】
・数量は作業者がカウントしなければいけない |
ハンディターミナルやスマートフォンでは、数量までは読み取れないため、作業者が手作業でカウントしなければならない点が最大のデメリットです。大幅な作業時間の短縮は期待できないでしょう。
また、バーコードがない商品だと当方法は使えません。
6-1-4.向いているケース
ここまでの内容をふまえ、当方法が向いているケースは下記のとおりです。
【バーコード読取式システムが向いているケース】
・在庫数量が多すぎない(小規模~中規模店舗・倉庫向け) |
上記両方にあてはまる企業なら、バーコード読取式システムを導入することで、棚卸し業務の改善を期待できるでしょう。
6-2.RFIDタグ読取式システム
RFIDタグ読取式システムの特徴は下表のとおりです。
【RFIDタグ読取式システム】
棚卸し方法 | 一定距離内の商品情報と数量を、一括で自動で読み取り、データをシステムへ自動送信する |
効率化 | ◎:一定距離内の商品情報と数量を一括で読み取れるので、大幅に効率化できる |
コスト | システム(オンプレミス型の場合):50万円~300万円 |
運用までの時間 | 長い:事前に商品にタグを貼る必要がある |
メリット | ・一括で商品情報と数量を読み取れる |
デメリット | ・導入コストが高い |
向いているケース | ・在庫数量が多い(大規模店舗・倉庫向け) |
6-2-1.どのようなシステムか
当方法は、RFIDで商品情報と数量を自動で読み取り、データをシステムへ自動送信する方法です。
RFIDとは、商品に直接接触せずに、電波を用いて商品に貼られたICタグ・RFタグで商品情報を読み取る技術のことです。このタグのことをRFIDタグと呼びます。
棚卸しの方法としては、下記のように進めていきます。
【RFIDタグ読取式システムの棚卸し方法】
1.専用ハンディターミナルで、RFIDタグが貼ってある商品情報と数量を自動で読み取る |
当方法では、一定の距離内に置いてある商品情報と数量を一括で読み取れるので、大幅な作業効率化を期待できます。
ただ、RFIDタグと専用ハンディターミナルがほかの方法より高額であり、RFIDタグを貼る工程が必要になるため、導入は慎重に進めるべきでしょう。
6-2-2.メリット
当方法の主なメリットとしては下記が挙げられます。
【RFIDタグ読取式システムのメリット】
・一括で商品情報と数量を読み取れる |
RFIDタグを活用すると、電波で一定の距離内にある商品の情報と数量を一括で読み取れます。作業者が手作業で数える必要も、数量をハンディターミナルに入力する必要もありません。
また、ハンディターミナルを直接かざす必要がないので、奥の方に置いてある商品や、袋や箱に入っているものも、取り出すことなく読み取れます。
このように、在庫を数える作業の大部分を自動化できるので、作業時間をかなり短縮することができ、ヒューマンエラーも減らすことができるでしょう。
6-2-3.デメリット
当方法の主なデメリットとしては下記が挙げられます。
【RFIDタグ読取式システムのデメリット】
・導入コストが高い |
一つ目のデメリットは、導入コストが高い点です。
当方法を導入するためには、《システム利用料+RFIDタグ+専用ハンディターミナル》を揃えなければいけません。
【RFIDタグ読取式システムにかかる主な費用】
システム利用費 | オンプレミス型の場合:50万円~300万円 |
RFIDタグ代 | パッシブタグ(電池なし):約10円~50円 |
専用ハンディターミナル代 | 約10~30万円 |
タグ1枚ごとに費用が発生するので、在庫数が多いほど負担も大きくなるでしょう。
二つ目のデメリットは、商品にRFIDタグを貼らなければならない点です。
棚卸しに活用するためには全商品にタグを貼り終えている必要があり、運用までにかなり時間がかかるでしょう。
6-2-4.向いているケース
ここまでの内容をふまえ、当方法が向いているケースは下記のとおりです。
【RFIDタグ読取式システムが向いているケース】
・在庫数量が多い(大規模店舗・倉庫向け) |
上記両方にあてはまる企業なら、RFIDタグ読取式システムを使えば、コストはかかるものの、作業効率と正確性の大幅改善を見込めるでしょう。
6-3.重量センサー式システム
重量センサー式システムの特徴は下表のとおりです。
【重量センサー式システム】
棚卸し方法 | 計量器で商品の重さを箱ごと(カゴや袋など)はかることで、数量を自動で割り出す |
効率化 | ◎:計量器に載せて置くだけで、自動で数量が算出される |
コスト | システム(オンプレミス型の場合):50万円~300万円 |
運用までの時間 | 短い:商品情報と基準重量を登録し、商品を載せるだけ |
メリット | ・ハンディターミナルなどで読み取る作業を省ける |
デメリット | ・軽すぎる、または大きすぎる商品は向いていない |
向いているケース | ・比較的小さい商品を取り扱っている |
6-3-1.どのようなシステムか
当方法は、計量器で商品の重さを箱ごと(カゴや袋など)はかることで、数量を自動で割り出す方法です。
棚卸しの方法としては、下記のように進めていきます。
【重量センサー式システムの棚卸し方法】
1.計量器に商品情報と基準重量を登録する |
当方法だと、普段から在庫数がリアルタイムで管理されているので、常に棚卸しが行われている状態です。
棚卸しだけでなく、在庫数が足りなくなると発注アラートが出るなど、通常の在庫管理の業務にも革新をもたらすでしょう。
6-3-2.メリット
当方法の主なメリットとしては下記が挙げられます。
【重量センサー式システムのメリット】
・ハンディターミナルなどで読み取る作業を省ける |
重量センサーなら、ハンディターミナルなどで商品情報や数量を読み取る必要がありません。リアルタイムで在庫情報が更新されるので、自動化を大きく進められます。
また、当方法ならバーコードやタグも不要です。サイズや素材の特性上、貼り付けが難しいアイテムでも計測できます。
6-3-3.デメリット
当方法の主なデメリットとしては下記が挙げられます。
【重量センサー式システムのデメリット】
・軽すぎる、または大きすぎる商品は向いていない |
軽すぎる商品だと、正確な在庫数を算出できないおそれがあります。また、大きすぎる・重すぎる商品も、計量器に載せるのが難しいため、向いていないでしょう。
さらに、計量器は重さで在庫管理しているため、万が一ほかの商品が混ざってしまっても気づきにくいというデメリットもあります。
6-3-4.向いているケース
ここまでの内容をふまえ、当方法が向いているケースは下記のとおりです。
【重量センサー式システムが向いているケース】
・比較的小さい商品を取り扱っている |
バーコードやタグを貼りにくい、比較的小さい商品の場合は、当方法が一番効率化を実現しやすいでしょう。
7.棚卸システム導入で失敗しないためのポイント2つ
棚卸システムの導入で最大限の効果を得るためにも、導入で失敗しないための2つのポイントを押さえておきましょう。
【棚卸システム導入で失敗しないためのポイント】
・既存ソフト・システムと連携できるか確認する |
7-1.既存ソフト・システムと連携できるか確認する
システムを選ぶときは、必ず自社で使用している既存ソフト・システムと連携できるかどうかを確認しましょう。
連携が取れないと、データの二重入力や転記ミスが発生し、業務効率を上げるどころか低下するおそれがあります。
特にERPや販売管理システム、会計ソフトなどの基幹システムとの互換性があることは非常に重要です。
また、導入時のデータ移行がスムーズにできるかどうかもチェックしておきましょう。
7-2.トライアルを活用する
システムを導入する前に、トライアルを活用してみるのも失敗を避けるために効果的です。
サービスの中には、「お試しパッケージ」を用意しているものも多くあります。
いきなり導入すると、「使い勝手が悪くて、期待する効果を得られなかった」という結果になるおそれがあります。
トライアルで実際の業務でシステムを試すことにより、使い勝手や機能の過不足、現場との適合性を確認できるでしょう。
あらためて課題も浮き彫りにでき、導入後のトラブルを未然に防ぐこともできます。
8.まとめ
最後に、本文の要点をおさらいします。
棚卸システムとは、デジタル技術によって、棚卸しの一部工程を自動化できるソフトウェアやツールのことです。
実際には「棚卸システム」というものは数少なく、「在庫管理システム」(または倉庫管理システム)の機能のひとつとして備わっているものがほとんどです。
システムの主な種類は下表のとおりです。
【棚卸しのシステム3種類】
種類 | 棚卸し方法 |
バーコード読取式 | ハンディターミナルやスマートフォンでバーコード等を読み取り、数量を入力する |
RFIDタグ読取式 | 専用ハンディターミナルで、タグをつけた商品の情報と数量を、非接触で一括で読み取る |
重量センサー式 | 計量器で商品の重さを箱ごと計測し、数量を自動で割り出す |
システム導入で自動化することにより、棚卸しにかかる時間の大幅な短縮と、人件費のなどのコストカット、さらにニューマンエラーの軽減を期待できます。
システムの導入にかかる費用は下記のとおりです。
【棚卸システム導入にかかる費用】
オンプレミス型の場合 | クラウド型の場合 |
約50万円~300万円 | 約1万円~20万円/月 |
費用もかかることから、システムの導入は下記にあてはまる場合に検討するようにしましょう。
【棚卸システムを導入したほうがいい企業】
条件(1) | 条件(2) | |
下記いずれかの課題を抱え、改善していきたい | かつ | システム導入にかける予算・時間がある |
以上、本記事がスムーズで正確な棚卸しの実施に役立てば幸いです。
コメント