あらゆる空間をデジタル化し、没入感のある体験を可能にするMatterportのバーチャルツアーは、幅広い業界で革新的なソリューションとして注目されています。
Matterportカメラは現在、Pro2カメラとPro3カメラがあり、屋外か屋内かによってどちらのカメラが適切か、同じ面積の空間でも条件によって、撮影にかかる時間や工数も変わります。
この記事では、撮影費用にも影響するMatterportの撮影条件について解説します。
本記事を読んで分かること
- 撮影前のチェックポイント
- 適切なカメラ選び
- 撮影の注意点
目次
1.撮影前のチェックポイント
Matterportの撮影を行うためには、事前の準備が不可欠です。
特に、撮影場所の特性を理解し、適切な計画を立てることで、クオリティの高いバーチャルツアーを作成することができます。
1-1. 撮影場所の事前チェック
Matterportでクオリティの高いバーチャルツアーを作成するためには、撮影場所の事前確認が不可欠です。
この段階で注意すべき主な要素は、こちらの3つ。
- 空間の広さ
- 空間の構造
- 光の影響
1-1-1.空間の広さの確認
空間の広さは、必要なスキャン回数に直接影響します。
広い空間では、より多くのスキャンポイントが必要となり、撮影時間と処理時間がかかります。
一方、狭い空間では、カメラの配置に制限が生じる可能性があります。
事前に図面などで空間の寸法を把握し、適切なスキャン間隔を計画することが重要です。
1-1-2. 空間の構造の確認
構造の確認も重要です。
複雑な間取りや多層構造の建物では、撮影導線をシミュレーションした上での計画が必要になります。
また、鏡や大きなガラス面など反射する表面がある場合、カメラの映り込みを避けるための工夫が必要になることも。
※窓や鏡はスキャン後の編集時に位置を設定します。
1-1-3. 光の影響の確認
光の影響は、バーチャルツアーのクオリティを左右する重要な要素です。
自然光と人工光のバランス、時間帯による光の変化、窓からの直射日光などを考慮する必要があります。
工場などにあるパトランプや、天井の高い空間は光の影響でエラーになりやすいため、事前確認が重要です。
光の影響が強い場所でも、Pro3カメラなら正確にスキャンできます。
事前確認では、以下の点をチェックしましょう。
- 各部屋の寸法と全体的なレイアウト
- 窓の位置と大きさ、カーテンやブラインドの有無
- 照明器具の種類と配置
- 反射面(鏡、ガラス、金属面など)の位置
- 階段や狭い通路など、撮影が困難な場所の特定
- 屋外エリアの範囲と特徴(庭、駐車場など)
前もって問題点(極端な明暗差、反射面の処理など)に対する解決策を準備することで、撮影当日のトラブルを最小限に抑えられます。
また、撮影空間に映り込みNGの掲示物や書類がないか、不要なものが置かれていたら片付けておきましょう。
1-2. 効率的な撮影順の計画
Matterportの撮影計画の基本は、効率的な導線計画です。
バーチャルツアーは、建物空間のスタートとゴールをつなぎ合わせて完成するため、一般的には、建物の入口から始めて、隣り合う部屋の順に各部屋や空間を撮影していきます。
撮影順序は、最終的な3Dモデルの品質と、ユーザーの没入感に直接影響を与えます。
これにより、自然な流れでバーチャルツアーを体験できるようになります。
以下が、撮影順序を検討する際の重要なポイントです。
- 撮影開始は入口から:ほとんどの場合、建物の入口から撮影を始めるのが理想的です。これにより、実際の訪問者と同じ視点でバーチャルツアーを開始できます。
- 階層ごとに撮影する:複数階がある建物の場合、各階を完全に撮影してから次の階に移動するのが効率的です。これにより、3Dモデルの構築時に階層間の整合性が保たれやすくなります。
- 大きな空間から小さな空間へ:リビングルームやオープンスペースなど、大きな空間から撮影を始め、そこから小さな部屋へと移動していくと効率良く撮影できます。
- 接続された空間は連続撮影する:つながっている部屋や空間は、連続して撮影することで、自然なつながりの3Dモデルを生成できます。
- 屋外エリアは建物内部の後に:庭や駐車場などの屋外エリアがある場合、建物内部の撮影後に屋外エリアを撮影します。
- 複雑な構造への対応:階段や狭い通路など、撮影が難しい場所は、周囲の空間との関係を考慮しながら撮影順序に組み込みます。
- 光の変化への対応:自然光の変化が大きい場合、同じ方向を向いた窓のある部屋を連続して撮影するなど、光の一貫性を保つ工夫が必要です。
- 再撮影の可能性を考慮する:撮影中にエラーや問題が発生した場合に備えて、再撮影が容易な順序を考えておくことも重要です。
効率的な撮影順を計画することで、以下のメリットが得られます。
- 撮影時間の短縮
- 一貫性のある高品質な3Dモデルの生成
- スムーズで直感的なバーチャルツアー体験の提供
- 編集作業の効率化
撮影前の事前確認を基に撮影順の計画を立てることで、効率的に撮影でき、クオリティの高いバーチャルツアーの作成ができます。
2. 適切なカメラ選び
Matterportで高品質なバーチャルツアーを作成するには、適切なカメラの選択が重要です。
ここでは、Matterportの代表的なカメラであるPro2とPro3の特徴を比較し、撮影空間の条件に応じたスキャンポイントの設定方法について解説します。
Matterportの撮影に使用されるカメラの種類や、撮影方法、撮影の注意点についてはこちらの記事でも紹介しています。 Matterportのカメラについて:Pro2とPro3の比較から撮影の注意点まで紹介 |
2-1. Pro2とPro3の特徴
Matterport Pro2とPro3は、特徴の異なるそれぞれ高性能なカメラです。
主な違いと特徴はこちら。
Matterport Pro2 | |
画質 | 4K |
センサー | 赤外線センサー |
スキャン間隔 | 1スキャンごと1.5〜2.5m |
重量 | 約3.5kg |
1スキャンあたりの時間 | 30秒 |
スキャン時間(4.5時間充電時) | 約8時間 |
特徴 | 4K解像度の静止画を撮影でき、詳細な測定が可能。ほとんどの屋内空間の撮影に適している。 |
Matterport Pro3 | |
画質 | 4K |
センサー | LiDARセンサー |
スキャン間隔 | 1スキャンごと5〜8m |
重量 | 約2.2kg |
1スキャンあたりの時間 | 20秒未満 |
スキャン時間(3.5時間充電時) | 約3時間(交換可能なバッテリー) |
特徴 | より高解像度の画像と、LiDARセンサーによる精密な3Dデータが得られる。屋外や、より広い空間の撮影に適している。 |
Pro2はプロクオリティの3Dカメラで、主に屋内撮影に適しています。
一方、Pro3はより高速なスキャン機能があり、屋内外問わず多様な環境での撮影に対応できます。
Pro3の方が1スキャンあたりの時間が短く、スキャン間隔が広いので、屋内でもPro3を使えばいいと考える方もいるでしょう。
ただし、Pro3はカメラ自体がPro2より高額なので、Pro3を使う場合は費用が上がる可能性も。
また、2-2.で解説しますが、撮影空間の条件によっては、Pro2で十分という場合も多くあります。
カメラを選択する際は、撮影環境や必要な画質、携帯性などを考慮し、プロジェクトのニーズに最も適したモデルを選びましょう。
2-2. 撮影空間の条件にあわせたスキャンポイント最適化
スキャンポイントは、撮影時にカメラを設置する各ポイントのことです。
Matterportのカメラは、1つのポイントごとにカメラを360度回転させて空間データをスキャンします。
カメラの性能として2m間隔のスキャンが可能でも、家具などがあると死角になってスキャンできない部分が発生してしまいます。
そのため、カメラの性能にあわせたスキャン間隔で、かつ死角になる部分を補う場所からも撮影しなければなりません。
こうした撮影空間の条件に応じて適切にスキャンポイントを設定することは、効率的で高品質な3Dモデル作成の鍵となります。
空間タイプ別のスキャン間隔の目安とポイントはこちら。
※屋外空間のみPro3での撮影を想定しています。
広い開放空間 | |
スキャン間隔 | 約2〜3m |
ポイント | 均等な間隔でスキャンし、死角を作らないよう注意 壁際や角にも必ずスキャンポイントを設置 |
狭い空間や廊下 | |
スキャン間隔 | 約1〜1.5m |
ポイント | 直線的に進みながらスキャン 曲がり角では必ずスキャンポイントを設置 |
複雑な構造や家具が多い空間 | |
スキャン間隔 | 状況に応じて0.5〜2m |
ポイント | 家具や障害物の周りを細かくスキャン 死角になりやすい場所に注意してポイントを増やす |
階段 | |
スキャン間隔 | 各踊り場と上下の床 |
ポイント | 階段の上下でしっかりとスキャン 可能であれば中間地点でもスキャン |
屋外空間 | |
スキャン間隔 | 約3〜5m |
ポイント | 建物の外観を捉えるよう広めにスキャン 庭や駐車場など重要な外部施設もカバー |
スキャンポイントの設定では、こちらも参考にしてください。
- 各スキャンで前後のスキャンポイントが見えるようにする
- 複雑な形状や細部は、より密にスキャンポイントを設置
- 反射面や透明な物体がある場合、角度を工夫する
適切なスキャンポイントの設定により、効率的な撮影と高品質な3Dモデルの作成が可能になります。
空間の特性を十分に理解し、状況に応じて柔軟に対応できるスキャン計画を立てることが重要です。
3.撮影の注意点
Matterportで高品質なバーチャルツアーを作成するには、撮影時の細かな注意点にも気を配りましょう。
とくに、光の管理と撮影空間内の準備は、バーチャルツアーのクオリティに大きく影響します。
この章では、直射日光や光源の変化への対応方法、撮影空間内の注意点について説明します。
3-1. 直射日光・光源の変化への対応
光の管理は、Matterport撮影において最も重要な要素のひとつです。
適切な光のコントロールにより、高画質で高精細なバーチャルツアーを作成することができます。
直射日光への対応 | 窓からの強い日光は、露出オーバーや影の問題を引き起こす可能性があります。 |
対策 | カーテンやブラインドを使用して光を拡散させる |
撮影時間を調整し、直射日光が弱い時間帯を選ぶ | |
光源の変化への対応 |
撮影中の光源変化(例:自然光の変化、照明のON/OFF) | バーチャル空間の明るさの一貫性を損なう可能性があります。 |
対策 | 可能な限り、撮影中は光源を一定に保つ |
光の反射と影の管理 |
鏡や窓などの光沢面からの反射や強い影 | 3Dモデルのクオリティに影響を与えます。 |
対策 | 反射面にはカバーをかけるか、角度を変えて撮影する |
光のコントロールに細心の注意を払うことで、より自然で魅力的なバーチャルツアーを作成することができます。
3-2. 撮影空間内のものを動かさない
Matterportは、各スキャンポイントで撮影したデータを基に3Dモデルを作成します。
そこで重要なのが、空間内のものの位置が最初のスキャンから最後のスキャンまで変化していないこと。
スキャンの途中で何かを動かしたりすると、問題が発生することもあります。
ドアは開いたままか閉めたまま、カーテンやブラインドの開け閉めもしないことが大切です。
これらの調整は、撮影前に確認しておけば準備しておけることです。
事前に撮影空間内を片付け、光の影響がないように対応を済ませておきましょう。
また、屋外撮影をする場合に起こりがちなのが、スキャンポイント周辺のものが動くこと。
人や車が動いたり、風が強いと草木が動く可能性も考えられるので、できるだけ影響を受けない時間に撮影をするなどの対策が必要です。
4.まとめ
Matterportの撮影は、適切な準備と注意が重要です。
この記事では、高品質なバーチャルツアー作成のための撮影のポイントを解説しました。
この記事のまとめはこちら。
- 撮影場所の事前確認:広さや構造、光の影響を把握することで、効率的な撮影計画を立てることができる。
- カメラ選びの重要性:Pro2とPro3の特徴を理解し、撮影環境に最適なカメラを選択することが大切。
- 光の影響への対応:直射日光や光源の変化に対応するための対策の紹介。
- スキャンポイントの設定:空間のタイプに応じた適切なスキャン間隔を設けることで、撮影の効率とクオリティを両立できる。
- 撮影の注意点:光のコントロールや撮影空間に関する具体的な注意事項を理解し、事前準備することが重要。
これらのポイントを踏まえることで、Matterportを活用したバーチャルツアーの撮影がよりスムーズに行え、魅力的なコンテンツを提供できるようになります。
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