「受注業務の効率が悪く、無駄な時間をとられてしまって困っている」
「もっと効率化したいけど、自社の状況に合った方法がわからない」
こうしたお悩みをお持ちの方は少なくないでしょう。
近年、企業には業務効率化による生産性向上が、強く求められています。
とくに、受注業務は、売上や顧客満足度に直結する重要な業務であり、効率化によるコスト削減と品質向上の効果が大きいといえます。
この記事では、受注業務が非効率になる原因を6つ挙げ、効率化を進める5ステップの流れを解説します。
さらに、最新技術を活用した施策からピンポイントで導入できる低コスト施策まで、幅広いニーズに合わせた効率化施策を紹介します。
自社の状況に合った効率化を見定め、具体的なアクションプランが立てるためにお役立てください。受注業務の無駄をなくし、業務スピードと品質の両立を実現しましょう。
1. 受注業務が非効率になる6つの原因
受注業務を効率化するために、まず考えたいのが、
「なぜ、受注業務は非効率になってしまうのか?」
という問いです。
非効率になる原因がわかれば、解決策も見えてきます。ここでは代表的な6つの原因について、見ていきましょう。
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1-1. 受注チャネルが複数ある
1つめの原因は「受注チャネルが複数ある」です。
電話・FAX・メールなど、複数の受注チャネルが存在している企業は少なくありません。
【多様な受注チャネルによる非効率の具体例】 |
受注チャネルが多岐にわたるほど、フォーマットが不統一な受注情報を集約・転記する作業に、膨大な工数が費やされます。これは、業務の非効率化を招く深刻な問題といえるでしょう。
1-2. ミスと手戻り対応が多い
2つめの原因は「ミスと手戻り対応が多い」です。
「ミス」は最大の非効率要因といっても過言ではありません。
修正対応、顧客への謝罪、関連部署への連絡・再調整など、本来は不要だったはずの業務が増大してしまうからです。
【ミスの例と影響】 ・出荷ミス:商品の型番や数量を誤って入力すると、誤った商品が出荷されてしまいます。返品対応や再出荷の手間が発生し、顧客の信頼を損ねるリスクもあります。 ・各種数字のズレ:金額や数量などの数字のミスがあると、棚卸しで在庫数が合わなくなる、経理で帳簿の数字が合わなくなるなど、ズレが生じます。その原因を突き止めるまでに、各担当者の多大な時間を奪ってしまいます。 ・発注漏れ:受注内容を正しくシステムに反映できていないと、必要な商品の発注が漏れることがあります。在庫切れによる納期遅延などのトラブルにつながります。 |
ミスを防ぐには、手戻りの原因を可視化し、再発防止につなげなければなりません。自動化ツールの導入やダブルチェック体制の整備は、有効な対策です。
1-3. 情報分散により在庫確認に時間がかかる
3つめの原因は「情報分散により在庫確認に時間がかかる」です。
受注や在庫に関する情報が分散していると、確認作業に多くの時間を要します。
【情報の分散がもたらすデメリット】 ・問い合わせ対応の遅れ:受注内容と在庫情報が連携していないと、在庫状況の確認に時間がかかります。問い合わせに迅速に回答できず、顧客にストレスを与えてしまいます。 ・受注担当者の心理的負荷:在庫状況を把握するために、複数のシステムや帳票を確認しなければなりません。顧客を待たせることへの焦りや、早期出荷へのプレッシャーを感じながら作業を進めるため、担当者の心理的負荷が高まります。 ・売上計上の遅れとキャッシュフローの悪化:欠品商品の発注や手配が遅れると、売上計上のタイミングが先送りされます。入金サイトが伸び、キャッシュフローの悪化につながるリスクがあります。 |
受注情報を一元管理し、関連する情報とリアルタイムで連携することが、確認時間の短縮につながります。業務の見える化を進め、情報の分散を解消することが重要です。
1-4. 受注予測の精度が低い
4つめの原因は「受注予測の精度が低い」です。
正確な受注予測ができていないと、過剰在庫や欠品、納期遅延といった問題が発生します。
とりわけ、需要変動が大きい商品やリードタイムが長い商品は、予測精度の影響を大きく受けます。
【受注予測に関する具体的な問題】 ・過剰在庫:需要予測が実際の受注量を上回ると、過剰在庫が発生します。在庫の保管コストがかさみ、商品の劣化や陳腐化のリスクも高まります。 ・欠品:逆に需要予測が過少だと、欠品により販売機会を逃してしまいます。顧客の信頼を損ない、他社への流出を招く恐れがあります。 ・納期遅延:部材の手配や製造の開始が遅れると、納期に間に合わなくなります。顧客への納期遅延は、信用失墜につながりかねません。 |
これらの問題は、最終的には財務的な健全性を揺るがす深刻な事態につながります。
効率化の観点から見れば、さまざまなリスク対応やトラブル処理に社内リソースが費やされ、業務が停滞しやすい状況といえるでしょう。
1-5. 顧客別の特殊対応が多い
5つめの原因は「顧客別の特殊対応が多い」です。
「お客様のために何でもしたい営業」と「責任あるオペレーションを実行したいバックオフィス」では、ベクトルが異なります。
営業担当者が顧客に過剰な期待を与えてしまうと、社内の業務遂行に支障をきたすことがあります。
【顧客別の特殊対応がもたらす弊害】 ・コストの増大:特殊対応には追加の工数がかかるため、コスト増につながります。顧客ごとにカスタマイズされたサービスを提供し続けると、収益性が悪化する恐れがあります。 ・マニュアル化の難しさ:顧客ごとに異なる対応ルールを設けると、マニュアル化が難しくなります。受注担当者の経験やスキルに頼らざるを得ません。 ・ミスの発生:例外的な対応が増えると、ミスのリスクが高まります。担当者の勘違いや確認漏れがトラブルにつながり、その処理に時間を取られる悪循環です。 |
“お客様のために” という大義名分で無理難題を受け入れ、バックオフィスにすべてしわ寄せが来るようでは、本来の営業力とはいえません。
例外的な対応が常態化しないように顧客ごとの特殊対応を最小限に抑え、業務プロセスの複雑化を防ぐことも、安定したサービス提供のためには必要です。
1-6. 業務が属人化している
6つめの原因は「業務が属人化している」です。
受注業務のルールや手順が標準化されていないと、担当者ごとのやり方に頼ることになります。属人化が進むと、業務の効率や品質にばらつきが生じます。
【業務の標準化が不足することによる問題点】 ・欠員時の混乱:標準化が不十分だと、特定の担当者にしか業務ができなくなります。担当者の急な休みや退職の際、業務の安定的な継続が難しくなります。 ・生産性のばらつき:担当者ごとに作業手順や優先順位が異なると、処理スピードにばらつきが出ます。全体の生産性を下げる原因となります。 ・品質の不安定さ:担当者のスキルや意識のレベルにより、サービス品質が安定しません。対応のばらつきは、顧客満足度の低下につながります。 ・改善の難しさ:属人的な業務プロセスは、担当者任せになりがちで、全体最適の視点に欠けます。問題点の把握や改善が難しくなります。 |
受注業務のプロセスを可視化し、ベストプラクティス(最良の実践例)をマニュアル化することが重要です。標準化を進め、誰でも一定の品質で業務を遂行できる体制を整えましょう。
以上、受注業務が非効率になる6つの原因を見てきました。
これらの課題を解決するには、業務プロセスの見直しとシステム化が不可欠です。続いて以下では、受注業務の効率化に向けた5つのステップを解説します。
2. 受注業務の効率化を進める流れ 5ステップ
続いて、具体的にどのように効率化を進めていけばよいか、その流れを見ていきましょう。5つのステップに分けて、解説します。
・ステップ1:受注チャネルの統合とシステムの導入 |
注意点として、以下でご紹介するのは、一般的なケースを総括的に示したものです。
実務では、業種や業態、現場ごとに直面する状況はさまざまですが、標準的なプロセスのひな型として、参考にしてみてください。
2-1. ステップ1:受注チャネルの統合とシステムの導入
1つめのステップは「受注チャネルの統合とシステムの導入」です。
電話・FAX・メールなどの多様な受注チャネルを集約し、受注管理システムを導入することは、受注業務効率化の基盤となります。
【受注チャネルの統合とシステム導入の進め方】 ・現状の受注プロセスの可視化:現在の受注チャネルと業務フローを洗い出し、可視化します。問題点や非効率な部分を特定します。 ・統合方針とシステム要件の策定:集約する受注チャネルを選定し、統合後の業務フローを設計します。あわせて、受注管理システムに求める機能要件を明確にします。 ・受注管理システムの選定:自社の規模や業務特性に適した受注管理システムを選びます。カスタマイズ性や拡張性、他システムとの連携性なども考慮します。 ・移行計画の立案:システム導入の手順とスケジュールを綿密に計画します。並行稼働期間を設けるなど、円滑な移行に配慮します。 ・運用ルールの整備と教育:統合後の業務フローに沿って、運用ルールを整備します。システムの使い方や例外処理の手順など、担当者のトレーニングを十分に行います。 |
受注管理システムの詳細は、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
受注管理システム【2024】目的別おすすめ7選と選び方のコツを解説
2-2. ステップ2:自動化ツールの導入
2つめのステップは「自動化ツールの導入」です。
受注業務の定型作業は、自動化ツールの活用で効率化を図りましょう。作業時間の削減と品質の安定化が期待できます。
【自動化ツールの選択肢の例】 ・RPA(Robotic Process Automation):定型的なPC操作を自動化するツールです。シナリオを作成するだけで、24時間365日の自動処理が可能になります。 ・OCR(Optical Character Recognition):紙の帳票をデータ化するツールです。FAXやメールの受注情報をテキストデータに変換できます。 ・AIチャットボット:問い合わせ対応を自動化するツールです。受注内容の確認や納期回答など、定型的な顧客対応をAIが24時間行います。 ・ワークフロー自動化ツール:受注処理の承認フローを自動化するツールです。担当者への自動割り当てや、承認の自動化・並列化が可能です。 ・AI需要予測システム:過去の受注データをAIで分析し、需要予測を自動化するツールです。適正在庫の維持と計画生産の最適化に寄与します。 |
自動化ツールは、自社の課題や目的に合わせて選定する必要があります。
本記事の後半では、とくに有効なツールをピックアップしてご紹介しますので、このまま読み進めてください。
2-3. ステップ3:リアルタイム在庫管理の連携
3つめのステップは「リアルタイム在庫管理の連携」です。
受注業務と在庫管理の連動により、業務効率と顧客対応力が向上します。受注情報とリアルタイムの在庫情報を連携させましょう。
【受注情報と在庫情報の連携方法】 |
在庫管理の適正化は、受注業務の効率化に直結します。在庫情報は社内の関連部署間でも共有し、全社的な業務最適化を図りましょう。
2-4. ステップ4:顧客対応プロセスの標準化
4つめのステップは「顧客対応プロセスの標準化」です。
顧客対応の手順を標準化し、属人化を防ぐことも効率化の鍵を握ります。問い合わせ対応やクレーム処理など、顧客対応のプロセスをルール化しましょう。
【顧客対応プロセスの標準化の進め方】 ・現状の顧客対応フローの可視化:現在の顧客対応の流れを洗い出し、フロー図で可視化します。担当者へのヒアリングを通じて、業務の実態を細かく把握します。 ・課題の抽出と改善案の立案:可視化したフローから課題を抽出します。非効率な部分や属人化している部分に着目し、改善案を立案します。 ・標準マニュアルの作成:抽出した課題や改善案を反映し、標準マニュアルを作成します。対応手順を細かく記載し、判断基準やトラブル時の対処法も明示します。 ・マニュアルの教育と浸透:標準マニュアルを使った教育を実施します。ロールプレイングなども活用し、実践的なスキルの習得を図ります。定期的な勉強会で、マニュアルの浸透を図ります。 ・PDCAサイクルの実践:マニュアルに基づく運用を定着させ、PDCAサイクルを回します。運用状況を定期的にモニタリングし、必要に応じてマニュアルの改訂やブラッシュアップを行います。 |
顧客対応の標準化は、担当者の働き方改革にもつながります。マニュアルを軸とした業務運営で、効率的かつ効果的な受注対応を実現しましょう。
また、標準化した内容を営業部門へ共有し、理解を求めることも重要です。営業部門と連携しながら、顧客満足度の向上につなげていきましょう。
2-5. ステップ5:受注予測と需要計画の最適化
5つめのステップは「受注予測と需要計画の最適化」です。
受注予測の高精度化と需要計画の最適化により、業務効率と収益性が向上します。データ分析に基づく需要予測を実践しましょう。
【受注予測と需要計画の最適化のための取り組み】 ・予測モデルの構築:過去の受注データに基づく予測モデルを構築します。季節性や傾向変動、特殊要因などを考慮し、高精度な予測を目指します。 ・社内外のデータ活用:社内の受注データに加え、市場データや経済指標なども活用します。外部環境の変化を予測に反映し、精度の向上を図ります。 ・予測サイクルの確立:月次・週次・日次など、予測のサイクルを確立します。長期の計画から短期の計画まで、時間軸に応じた予測を行います。 ・予測精度の検証と改善:予測値と実績値の乖離を定期的に検証します。乖離要因を分析し、予測モデルの改善や条件の見直しにつなげます。 ・需給バランスの最適化:需要予測に基づき、適正な在庫水準や生産計画を立案します。必要な時に必要な量を確保し、機会損失の防止と在庫コストの最小化を両立させます。 |
受注予測の高度化には、AIやビッグデータ分析など先進技術の活用も有効です。ITの力を借りながら、データに基づいた意思決定を推進していきましょう。
以上、受注業務の効率化に向けた5つのステップを具体的に見てきました。
自社の現状と課題を踏まえ、優先順位をつけて着実に取り組むことが重要です。デジタル技術も積極的に活用しながら、受注業務の最適化を図っていきましょう。
3. 受注業務を効率化する具体的な4つの施策
受注業務の抜本的な改革には、新しい仕組みの導入や最新技術の活用が欠かせません。ここでは、とくに有効な4つの施策をピックアップして解説します。
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3-1. 商品情報をクラウド上に集約する
1つめの施策は「商品情報をクラウド上に集約する」です。
商品情報のクラウド化は、受注担当者の業務効率化に大きく寄与します。商品問い合わせへの迅速な対応が可能になって、業務負荷の軽減と顧客満足度の向上が実現するからです。
【商品情報のクラウド化の進め方】 ・商品情報の全件調査とデータ整理:現在の商品情報をすべて洗い出します。重複データの削除や不整合の解消など、データのクレンジング(正確性を高めるためにデータを整える処理)を行います。 ・商品マスタの設計:商品情報を管理するためのマスタ(基幹となるデータベース)を設計します。商品コード・商品名・価格・仕様など、管理すべき項目を整理します。 ・クラウドサービスの選定:自社の要件に適したクラウドサービスを選定します。セキュリティ面の信頼性や、API(他システムとの連携を実現するインターフェース)の提供状況なども考慮します。 ・データ移行とマスタメンテナンス:整理した商品情報をクラウドサービスに移行します。日々の商品マスタメンテナンスの運用ルールを整備します。 ・関連システムとの連携:受注管理システムや在庫管理システムなど、商品情報を参照する関連システムとのデータ連携を実装します。 |
注意点としては、商品数が多くカテゴリーも多岐にわたる商社やメーカーの場合、商品情報の管理自体を効率化する必要があります。そうしなければ、上記の取り組みが逆に非効率になってしまう恐れがあるからです。
そこで有用な選択肢となるのが、商品カタログの二次活用です。制作した商品カタログのデータをクラウド上のデータベースに格納して、さまざまな形態で活用できるようにします。
具体的なソリューションとしては、「WONDERCART」があります。
商品リスト出力から簡単に商品マスタを作成できたり、問い合わせに商品絞り込み検索機能で迅速に対応できたりと、受注業務の効率化に直結する機能が多数あります。
WONDERCARTの各種機能は、業務の属人化解消・作業時間の短縮・人為的ミスの防止と削減に効果的です。
3-2. RPAで受注データ入力を自動化する
2つめの施策は「RPAで受注データ入力を自動化する」です。
RPA(Robotic Process Automation)とは、人間が行う定型的なパソコン操作を、ソフトウェアのロボットによって自動化する技術です。
仮想的なロボットが、あらかじめ設定されたルールに基づいてパソコンを操作し、データ入力などの単純作業を代行します。
【具体的なRPAソリューションの例】 ・WinActor:日本国内で高いシェアを持つRPAツール。NTTの研究所で生まれた純国産ツールで完全日本語対応。初心者でも直感的に操作できる。 ・NICE Robotic Automation:カスタマーサービスやコンタクトセンターの自動化に強みを持つRPAソリューション。AIとの連携で高度な業務自動化が可能。 ・Kofax RPA:ドキュメント処理やプロセス自動化全般に対応するRPAツール。高度なOCR機能で紙媒体からのデータ取得が容易。 |
【RPAによる受注データ入力自動化の進め方】 ・現行業務のプロセス分析と標準化:現在の受注データ入力業務のプロセス分析し、フロー図で可視化します。自動化に向けて、業務プロセスの標準化を図ります。 ・RPA開発ベンダーの選定:自社の要件に適したRPA開発ベンダーを選定します。導入実績や技術力、サポート体制などを総合的に評価します。 ・シナリオ設計と開発:対象業務の操作手順をもとに、RPAのシナリオを設計します。シナリオに沿ってRPAを開発し、動作確認を行います。 ・本番適用とモニタリング:十分なテストを経て、RPAを本番環境に適用します。RPAの稼働状況を継続的にモニタリングし、安定運用を図ります。 |
RPA導入の注意点としては、例外処理への対応力は高くありません。RPAで自動化する業務の選定は慎重に行い、例外処理の発生頻度が低い業務から着手することが大切です。
3-3. EDIで取引先と連携する
3つめの施策は「EDIで取引先と連携する」です。
EDI(Electronic Data Interchange)とは、企業間で取引関連書類を電子的に交換するための標準フォーマットと、そのための情報システムです。
EDIを導入すると、たとえば受発注業務は次のように変わります。
・導入前:A社では、取引先B社からの発注書をFAXで受け取り、それをA社の受注担当者が社内の受注システムに手動入力する必要がありました。 ・導入後:取引先B社が発注データをB社のシステムに入力すると、そのデータがA社の受注システムに送信されます。A社では、受信した発注データを確認するだけで、システムに自動的に取り込まれるようになります。 |
効率化の観点では理想的な体制ですが、注意点として、EDI導入には取引先との合意形成が不可欠です。
自社だけでなく、取引先の発注フローやシステムの変更を求めることになるため、導入のしやすさは業界や取引先の性質によって、大きく異なります。
【EDI導入による取引先連携の進め方】 ・取引先との合意形成:EDI導入の目的と効果を取引先に丁寧に説明し、理解を得ます。導入スケジュールや費用負担などについて、取引先と合意を形成します。 ・EDIの標準フォーマットの選択:業界標準や汎用的なEDIフォーマットから、自社に適したものを選択します。取引先の使用フォーマットとの互換性も考慮します。 ・EDIシステムの開発と接続テスト:選択したEDIフォーマットに基づき、EDIシステムを開発します。取引先とのデータ接続テストを綿密に行い、連携の正確性を担保します。 ・本番運用の開始とメンテナンス:十分なテストを経て、取引先とのEDI運用を開始します。安定的なデータ連携を維持するため、定期的なメンテナンスを行います。 |
現実的には、まだまだ導入が難しいケースも多く、その場合には前述の「WONDERCART」のような自社内でも完結できるシステムの導入が推奨されます。
3-4. AIを活用した受注予測モデルを構築する
4つめの施策は「AIを活用した受注予測モデルを構築する」です。
AIを活用した受注予測モデルの構築は、需要予測の高度化に大きく貢献します。
【AIを活用した受注予測モデル構築の進め方】 ・予測対象と目的の設定:何を予測するのか(例:製品別、地域別、顧客別の受注数)、どのような目的で予測するのか(例:在庫最適化、キャンペーン施策の立案)を明確にします。 ・必要データの準備:予測に必要な過去の受注データや関連データを収集します。データに欠損や誤りがないよう、丁寧にクリーニングします。 ・予測に有効な情報の抽出:曜日、祝日、イベント、トレンドなど、受注数に影響しそうな情報を見つけ出し、特徴量としてデータ化します。 ・予測モデルの作成:機械学習アルゴリズムを使って、用意したデータを基に受注数を予測するモデルを構築します。 ・予測精度の確認と改善:作成したモデルが適切に予測できているか評価します。精度が不十分な場合は、データの見直しやアルゴリズムの調整により、性能向上を図ります。 |
具体的なAIソリューションの例としては、以下が挙げられます。
【具体的なAIソリューションの例】 ・SAP Integrated Business Planning:AIと機械学習を活用したサプライチェーン計画ソリューション。需要予測と在庫最適化が可能。 ・Oracle Demand Management Cloud:クラウドベースの需要予測ソリューション。高度なアルゴリズムで精度の高い予測を実現。 ・Blue Yonder:AIと機械学習を用いた需要予測ツール。リアルタイムのデータ分析で市場の変化に迅速に対応。 |
注意点としては、予測モデルの性能は学習データの質に大きく依存します。また、予測モデルの構築とメンテナンスには専門的なスキルが必要となります。
どこまで高度な分析を求めるのか、その必要性は、各企業の状況に応じて判断することが重要です。
4. 受注業務の効率化に取り組む際の注意点
受注業務の効率化は、業務改革の重要なテーマです。ただし、効率化の推進には注意点があります。ここでは、3つのポイントをお伝えします。
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4-1. 商慣習や業界ルールに配慮する
1つめの注意点は「商慣習や業界ルールに配慮する」です。
受注業務の効率化を進める際は、商慣習や業界ルールへの配慮が欠かせません。
長年にわたって形成されてきた商習慣を無視した効率化は、取引先との関係悪化を招きかねないからです。
【商慣習・業界ルールに配慮するためのポイント】 ・書面での発注書のやりとり:一部の業界では、紙の発注書の習慣が根付いています。FAXを活用しているケースも少なくありません。デジタル化を進める際は、取引先の理解を得ながら段階的に移行する必要があります。 ・人的な関係構築:業界によっては、人的な関係構築が重視される傾向にあります。効率化を進める一方で、営業担当者による定期的な訪問や情報交換の機会も大切にしなければなりません。 ・業界標準フォーマットの採用:受発注データの電子化には、業界標準のフォーマットを採用することが望ましいでしょう。業界団体の動向を注視して対応することが大切です。 |
商慣習や業界ルールは、なかなか変えられないのが実情です。
まずは、社内でできる効率化を進め、取引先に協力を求める部分は、先方の理解を得ながら改革を進めることが大切です。強引な変更は、取引先との信頼関係を損ねる恐れがあります。
4-2. コストと効果のバランスを考慮して施策を選ぶ
2つめの注意点は「コストと効果のバランスを考慮して施策を選ぶ」です。
受注業務の効率化施策は、コストと効果のバランスを見極めて選択することが重要です。投資対効果を十分に検討し、自社に最適な施策を見定める必要があります。
【コストと効果のバランス評価の進め方】 ・現状の業務コストの可視化:人件費や資材費など、現在の受注業務にかかっているコストを可視化します。効率化による削減効果の試算に役立てます。 ・施策導入コストの見積もり:RPA・AI・業務システムなど、各施策の導入コストを詳細に見積もります。初期投資だけでなく、ランニングコストも考慮に入れます。 ・定量的な効果試算:各施策による業務時間の削減効果や、人的ミスの防止効果を定量的に試算します。可能な限り数値化し、投資対効果を明確にします。 ・優先順位付けとロードマップ策定:コストと効果のバランスを評価し、施策の優先順位を付けます。導入のロードマップを策定し、段階的に取り組む計画を立てます。 |
高額な投資を要する施策は、慎重な検討が必要不可欠です。また、一部分に対する試験的導入を通じて効果を検証し、その後で全面展開を図るスモールスタート方式も効果的な手法といえます。
4-3. 部門間連携の強化による全体最適化を並行して進める
3つめの注意点は「部門間連携の強化による全体最適化を並行して進める」です。
受注業務は、営業部門、物流部門、経理部門など、社内のさまざまな部門と密接に関わっています。受注業務の効率化は、関連部門との連携を強化し、全体最適化を図ることが重要です。
【部門間連携強化の進め方】 |
受注業務の効率化は、部門の壁を越えた取り組みが欠かせません。関連部門を巻き込み、情報を共有し、プロセス全体を俯瞰しながら、全体最適化を追求することが大切です。
5. まとめ
本記事では「受注業務の効率化」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
受注業務が非効率になる6つの原因として、以下を解説しました。
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受注業務の効率化を進める流れは、以下のとおりです。
・ステップ1:受注チャネルの統合とシステムの導入 ・ステップ2:自動化ツールの導入 ・ステップ3:リアルタイム在庫管理の連携 ・ステップ4:顧客対応プロセスの標準化 ・ステップ5:受注予測と需要計画の最適化 |
受注業務を効率化する具体的な4つの施策として、以下を解説しました。
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受注業務の効率化に取り組む際の注意点は、以下のとおりです。
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受注業務の無駄をなくし、効率化を進めることは、企業の競争力強化に直結します。顧客ニーズに迅速かつ的確に応え、顧客満足度を高めることは、持続的な企業成長の礎となるでしょう。受注業務の効率化に向けて、全社一丸となった取り組みをスタートしていただければと思います。
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