棚卸しとは?目的・所要時間・コスト・手順&失敗しないためのコツ

「棚卸しとはどういう作業なのか。どのように実施すればだろう。」

棚卸しの担当者になったものの、棚卸しの意味や目的がはっきりわからず、業務に正しく対応できるか不安に感じている人も多いと思います。

棚卸しとは、企業や店舗などが所有する商品などの在庫数を調べることです。

棚卸しの基本的な内容は下図のとおりです。

棚卸しは現場の負担が大きいうえに、限られた時間内に正しく数え終わらせる必要があります。

正確に、かつ効率よく実施するためには、綿密な事前準備が欠かせません

準備を十分せずに当日を迎えると、時間が足りなかったり、やり直し作業が発生してしまったりと、トラブルが起こりやすくなるでしょう。

当日混乱なくスムーズに作業を終わらせるためにも、準備を万全に整えておくことが重要です。

【本記事で分かること】

・棚卸しの基礎知識|時期・回数・所要時間・コストなど
・棚卸しの目的
・棚卸しを成功させるポイント
・棚卸しの手順6STEP

本記事を読めば、棚卸しについて理解でき、棚卸しを失敗することなく実行できるようになります。

ぜひ最後まで読んでいってくださいね。

1.棚卸しとは

棚卸しとは、企業や店舗などが所有する商品などの在庫数を調べることです。

在庫数を調べた後、データ上の在庫と照合し、今期の棚卸高(在庫の金額)を算出します。

どのような作業なのか、下表にまとめました。

【棚卸しの基礎知識】

棚卸しとは

企業や店舗などが所有する商品などの在庫数を調べる作業

実施目的

・企業の正確な利益を確認するため
・在庫切れ・過剰在庫を防ぐため
・適切な在庫管理に改善していくため

実施時期

決算前

実施回数

1~4回/年、業種によっては毎月

実施所要日数

実施:半日~3日、(準備から含めると1~2カ月)

コスト

・システムやハンディ―ターミナルを導入する場合はその費用
・人件費など

棚卸対象

・商品・製品
・半製品
・仕掛品
・原材料
・貯蔵品・消耗品

関連部門

・倉庫
・経理
・物流
・購買
・営業
・生産管理 など

棚卸しはほぼすべての業種で行われますが、その大変さは業種や事業規模によってさまざまです。

対象の在庫数が少なければ簡単な作業ですが、在庫をたくさん抱えている企業では、かなり負担の大きい作業となります。

上表の項目の中で、【実施時期と回数・所要日数・コスト】について、もう少し詳しく見ていきましょう。

1-1.棚卸しの実施時期と回数

棚卸しは、一般的には決算月に合わせて年度末に行います(例:3月決算なら3月末に実施)。

棚卸しで確認した在庫を、棚卸資産として決算書に記載するためです。

年に1回だけのところもあれば、四半期ごとや毎月実施するところもあり、業種や事業規模によって頻度はさまざまです。

たとえば、アパレル業界では商品を入れ替える季節ごとで実施したり、在庫の入れ替わりが激しい飲食店や小売業は毎月実施したりしています。

まずは同じ業種・規模のところを参考にして実施時期と回数を決め、その後実際の棚卸しの状況に合わせて調整しましょう。

年1回の実施で棚卸ミスがあまりに多いのなら、回数を増やすことを検討してみてください。

1-2.棚卸しの所要日数

棚卸しにかかるに所要日数は、一般的には半日~3日ですが、在庫数と人数、棚卸方法によって大きく変わります

【棚卸しの所要日数を決める要素】

・在庫数
・作業人数
・棚卸方法

帳簿上の在庫数を作業人数と仮の所要時間で割り、在庫1つあたりのカウント時間が適切かどうかで、所要時間を見積りましょう。

カウントミスなどのトラブルが発生することも見越して、ゆとりを持って設定しておくと安心です。

棚卸しは、当日の作業だけでなく、事前準備の時間も必要です。

初めて棚卸しを実施する場合は、約1~2カ月前から準備に取り掛かり、計画的に棚卸しを進めていくようにしましょう。

1-3.棚卸しにかかるコスト

棚卸しにかかるコストは下記のとおりです。

【棚卸しのコスト】

項目

内容

金額(在庫数1,000点の店舗で算出)

人件費

残業手当や臨時スタッフ雇用費用も含む

数万円~数十万円

業務停止コスト

営業や生産を停止することで発生する損失

数万円~数十万円

システム・ハンディ―ターミナル導入費用

導入する場合

数万円~数百万円

物品費

作業に使用するラベルなど

数千円

高額なシステムなどを導入しない限り、直接的な費用の発生はほとんどありません。

ただ、営業を停止して従業員が作業を行うため、人件費や売上損失が生じます(営業しながら行うケースもある)。在庫数が多いところほど損失は大きくなるでしょう。

2.棚卸しの目的|しないとどうなるのか?

棚卸しは手間・時間・費用もかかる作業であることから、実施しなくていいなら避けたいですよね。

しかし、棚卸しをしない、つまり実際の在庫数を把握していないことは、経営に大きな悪影響をもたらします。

本章では、棚卸しの重要性を正しく理解するためにも、棚卸しの3つの目的について紹介していきます。

【棚卸しの目的】

1.企業の正確な利益を確認するため
2.在庫切れ・過剰在庫を防ぐため
3.適切な在庫管理に改善していくため

2-1.企業の正確な利益を確認するため

企業の正確な利益を確認するためにも、棚卸しは非常に重要な作業です。

帳簿上の在庫だけで棚卸高や利益を出すと、財務状況を誤って表示することにつながります。

利益が実際よりも多いと、本来よりも税金を多く支払うことになってしまいます。

逆に、利益が実際よりも少ない場合、税務調査で明らかになれば、脱税と判断されて重加算税を課せられる可能性もあるでしょう。粉飾決算の疑いをかけられると、企業の信用も大きく損なわれます。

経営の健全性と信用を保つためにも、必ず棚卸しを実施しましょう。

2-2.在庫切れ・過剰在庫を防ぐため

棚卸しの目的として、在庫切れ・過剰在庫が起こらないようにする点も挙げられます。

実際の数量が帳簿より少ないことや品質劣化に気づかないままだと、「在庫があると思って発注を受けたものの、商品がなかった」「商品が損傷していた」と、販売機会を逃してしまうリスクが高まります。

逆に、実際の数量が帳簿より多いと、無駄な保管・処理コストが発生してしまうおそれもあるでしょう。

適切な受発注や在庫管理を行うためにも、定期的な棚卸しは欠かせません。

2-3.適切な在庫管理に改善していくため

適切な在庫管理に改善していくことも、棚卸しの目的のひとつです。

棚卸しを行わないと、たとえば紛失や盗難が頻繁に起こっていたとしても、気づくことができません。以降も紛失や盗難が増え続け、さらに実在庫とデータ上の差が広がり、前節のような問題を引き起こしてしまうでしょう。

定期的に棚卸しを行えば、紛失や盗難があった場合にも気づくことができます。そして、同じようなトラブルが起きないよう、対策を講じることにつながります

このように、棚卸しは保管状況を見直す良い機会となり、よりよい在庫管理を目指して、効率化や適正化を進めていけるようになるでしょう。

3.事前準備が最重要!棚卸しをスムーズに進めるコツ

棚卸しは健全な経営のために欠かせないとはいえ、経営面にとっても、作業者にとっても負担の大きい作業です。

また、カウントミスなどのトラブルも起こりやすく、予想しているよりも難しい作業でもあります。

負担が大きく煩雑な棚卸しを、失敗せずスムーズに進めるためには、何よりも事前準備が重要です。

事前準備とは、主に次の内容です。

【棚卸しの事前準備】

・棚卸しに使うツールの準備(Excelやハンディ―ターミナルなど)
・対象在庫の洗い出し
・作業者の選定と配置
・所要時間の見積もりとスケジューリング
・カウント方法(数える順番・単位など)のルール決め

上記の準備を怠ると、確実にトラブルが起こり、棚卸しの作業時間も伸びてしまうでしょう。

たとえば、物の数え方は箱単位なのか個単位なのかを決めておかないと、作業者によって報告にバラつきが出てしまいますよね。

このような混乱を避け、最速スピードで棚卸しを完了するためには、事前に細部までしっかりと準備を行っておくことが欠かせません。

準備を万全にするためには、下記のポイントを意識して取り組むようにしましょう。

【事前準備を細部までしっかり行うために重要なこと】

・早めに準備する
・関係部署と協力し合う
・自社に合った棚卸方法を選ぶ

上記の内容をふまえながら、棚卸しを成功させる手順について次章で紹介していきます。

4.失敗しないための棚卸しの手順6ステップ

それでは、棚卸しの実施方法について見ていきましょう。

棚卸しは下記6ステップで進めていきます。

【失敗しない棚卸しの手順6ステップ】

事前準備
(約1~2か月前から)

STEP1.対象在庫を洗い出す
STEP2.棚卸しの方法・ルールを決める
STEP3.棚卸しのスケジュールを決める
STEP4.棚卸しのメンバーを決める

当日

STEP5.準備どおりに実施する
STEP6.集計して評価額を計算する

事前準備のSTEP2~4は、順番が前後しても問題ありません。自社のやりやすいように進めてください。

4-1.STEP1.対象の在庫を洗い出す

まずは、帳簿上で棚卸しの対象となる在庫を洗い出します。

対象在庫を明確にしないと、棚卸しのスケジュールやメンバー、適切な方法などを正しく決められないからです。

棚卸しの対象在庫は商品だけではありません。対象範囲は法人税法で定められており、下記のとおり企業の資産すべてが対象となります。

【棚卸しの対象となる在庫】

・商品・製品
・半製品(自社製品の加工に用いるが、そのままでも販売・貯蔵が可能な製品)
・仕掛品(製造途中の製品)
・原材料
・貯蔵品・消耗品

参考:法人税法施行令 | e-Gov 法令検索-第10条

なお、少額で重要性の低い消耗品などは除外しても問題ありません。

4-2.STEP2.棚卸しの方法・ルールを決める

在庫を把握したら、棚卸しの方法やルールを決めていきましょう。

棚卸しで決めなければならない項目はたくさんあります。

【棚卸しで決めるべき方法・ルール】

活用ツール

エクセル・手作業 or システム・ハンディ―ターミナル導入

実施方法

タグ方式 or リスト方式(手作業で数える場合)

ルール

・数える単位
・数える順番
・数字やアルファベットの書き方 など

4-2-1.活用ツール|エクセル・手作業 or システム・ハンディ―ターミナル導入

まず、棚卸しはエクセルと手作業で実施するか、システム・ハンディ―ターミナルを活用するかを決めましょう。

一般的にはアイテム数約2,000点を分岐点に、在庫数が少なければエクセル・手作業、在庫数が多ければシステム・ハンディ―ターミナル導入がおすすめです。

しかし、それぞれメリット・デメリットがあるので、下表の内容もふまえたうえで、どちらの方法にするか判断しましょう。

【棚卸しの活用ツール】

エクセル・手作業

システム・ハンディ―ターミナル導入

在庫数

商品数2,000点以下向け

商品数2,000点以上向け

効率化

コスト

安い

高い

導入の手軽さ

正確性

エクセル・システムそれぞれを活用した棚卸方法については、下記記事で詳しく解説しています。

関連記事:
エクセルで棚卸しを効率化!無料テンプレートあり|差異が一目瞭然
棚卸システムとは|どれくらい効率化できる?コスト・種類・注意点

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エクセル管理と異なり、より正確な在庫の把握が可能になるため、棚卸しの集計作業が簡単になります。

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4-2-2.実施方法|タグ方式orリスト方式(手作業で数える場合)

手作業で数える場合、主にタグ方式とリスト方式というやり方があります。

それぞれの特徴を下表にまとめました。

【棚卸しの実施方法】

タグ方式

リスト方式

やり方

数えた個数をメモ等に書いて貼り付け、あとで回収する

在庫リストをもとに在庫数を確認する

メリット

・カウント漏れや重複を避けやすい
・商品知識がなくても作業しやすい

・効率がよい

デメリット

・時間と手間がかかる

・リストに漏れている在庫があるおそれがある
・複数場所に保管してあると作業が複雑になり、カウントの正確性が低くなる

自社の在庫や作業者の状況をふまえ、向いている方を選ぶようにしましょう。

4-2-3.ルール|数える単位・順番・記載方法

数え方やメモ等への書き方についても、細かなルールを決めていきましょう。

作業者によってやり方が異なると、カウントミスや漏れ、重複が起きる原因となります。

ルールづくりは下記の内容を参考にしてください。

【棚卸しで決めるべきルール】

数える単位

例:小袋単位か、中身の個数単位か

数える順番

例:左上・手前から

数字やアルファベットの書き方

例:数字の”7”は、”1”と見分けがつくよう、斜めに線を入れる

上記のほか、棚卸しで起こりやすいミスやトラブルを知り、回避に効果的な方法を取りれていくようにしましょう。

下記の記事で棚卸しで多いミスを紹介しているので、併せてご一読ください。

関連記事:
 棚卸しのミスを極限まで減らす7の対策と事前予防策を解説

4-3.STEP3.棚卸しのスケジュールを決める

棚卸しをいつ、何時間で行うかも決めていきましょう。

棚卸しは、すべての在庫の動きを完全に止めて行う一斉棚卸というやり方が主流です(24時間営業の場合は、棚やエリアごとに順番に数えていく循環棚卸が多い)。

その間は営業や通常作業を止めることになるため、下記を参考に棚卸しの時間を確保するようにしましょう。

【棚卸しスケジュール例】

・業務時間終了後に行う
・休業日に行う
・業務時間に営業・通常作業を停止して行う

4-4.STEP4.棚卸しのメンバーを決める

棚卸しのメンバーや配置も決める必要があります。

棚卸しは2人組での作業がセオリーです。2人が同じ物を同じように数えていくことで、カウントの正確性が高まるからです。

2人組で行うこともふまえて、必要な人数を算出していきましょう。担当部署の従業員では足りない場合は、他部署から応援を呼んだり、臨時スタッフを雇用したりする方法があります。

メンバーと配置が決定したら、やり方やルールを作業者と共有しましょう。

4-5.STEP 5.【当日】準備どおりに実施する

棚卸しの作業当日は、事前準備のとおりに実施していきます。

4-6.STEP6.集計し、評価額を計算する(経理部)

カウント作業が終わったら集計を行い、棚卸高を確定して在庫評価を行っていきます。

棚卸在庫を評価する方法には、「原価法」と「低価法」の2種類があります。

一般的には原価法で行いますが、それぞれの特徴やメリットを理解して、自社に合った方法を選びましょう。

【棚卸しの実施方法】

原価法

低価法

やり方

取得原価(在庫を仕入れたときの原価)をもとに在庫金額を評価する方法

原価法の評価額と、期末における時価のどちらか低い方で評価する方法

メリット

計算が簡単である

経年劣化や需要低下による価格変動を反映させられる

デメリット

価値が低下した場合正しく評価できない

時価の評価の算定が複雑である

以上で、一連の棚卸し業務は完了です。

5.まとめ

最後に本文の要点をまとめます。

棚卸しとは、企業や店舗などが所有する商品などの在庫数を調べることです。

棚卸しの基本的な内容は下表のとおりです。

【棚卸しの基礎知識】

棚卸しとは

企業や店舗などが所有する商品などの在庫数を調べる作業

実施目的

・企業の正確な利益を確認するため
・在庫切れ・過剰在庫を防ぐため
・適切な在庫管理に改善していくため

実施時期

決算前

実施回数

1~4回/年、業種によっては毎月

実施所要日数

実施:半日~3日、(準備から含めると1~2カ月)

コスト

・システムやハンディ―ターミナルを導入する場合はその費用
・人件費など

棚卸しには下記3つの目的があるため、負担の大きい作業ですが、適切に実施するようにしましょう。

【棚卸しの目的】

1.企業の正確な利益を確認するため
2.在庫切れ・過剰在庫を防ぐため
3.適切な在庫管理に改善していくため

棚卸しは下記6ステップで進めていきます。当日トラブルを引き起こさないためにも、準備を万全にしておくことが大切です。

【失敗しない棚卸しの手順6ステップ】

事前準備
(約1~2か月前から)

STEP1.対象在庫を洗い出す
STEP2.棚卸しの方法・ルールを決める
STEP3.棚卸しのスケジュールを決める
STEP4.棚卸しのメンバーを決める

当日

STEP5.準備どおりに実施する
STEP6.集計して評価額を計算する

以上、本記事がスムーズで正確な棚卸しの実現に役立てば幸いです。

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