「EDIとは何ができるもの?」
「EDIを導入するとメリットがありますか?」
このように、受発注に使う「EDI」が便利だという情報を聞いたものの、EDIに関する情報が少なく困っていませんか。
ずばりEDIとは、企業の受発注業務を効率化するために、企業同士の取引を電話回線やインターネット回線の上で行うシステムのことです。
EDIを導入することで、企業は受発注にかかわる様々な書類や電話のやり取りを自動化することができ、以下のように受発注業務を効率化できます。
電話やFAX、郵送で注文を受ける従来の受発注業務 |
EDIを導入した企業の受発注業務 |
このように、EDIを導入することで、煩雑化している受発注業務を効率化することが可能です。
一方で、取引データがシステムによって自動で処理されるEDIには、以下のような対応ができないなどの欠点もあります。
・発送手続き完了後に価格や納期を変更した |
そのため、EDIの導入を検討するときは、「自社にEDIは適しているか」を慎重に判断する必要があります。
そこで今回は、以下のようにEDIについてわかりやすく解説していきます。
この記事を読むとわかること |
・受発注システム「EDI」の概要 |
この記事を読めば、EDIについて詳しく理解することができ、自社でEDIを導入するべきかどうか判断できるようになりますよ。
ぜひご覧ください。
目次
1. 受発注システム「EDI」とはどのようなもの?
冒頭で解説したように、受発注システム「EDI」とは企業同士の取引を電話回線やインターネット回線の上で行うシステムのことです。
EDIを活用して製品やサービスの売買取引を行うことで、取引に係る業務の効率化を図れることから、注目を集めています。
EDIの導入によって、以下のように受発注業務を効率化することができます。
<EDI導入前の受発注業務>
<EDI導入後の受発注業務>
このように、EDIでは受発注情報をデータでやり取りします。
そのため、従来のように工程ごとに書類を作成して、FAXを送信したり郵送したりする手間がかかりません。
EDIは安全性も考慮されている(セキュリティ対策) |
電話回線やインターネット回線の上で行うと聞くと、セキュリティ面に不安を感じますよね。 しかし、実際のEDIには以下のように様々な角度からセキュリティ対策が施されており、安全性についても考えられています。 ・事前に登録された特定の取引先とのみ取引ができる 上記以外にも、EDIシステムを提供する事業者側でもセキュリティ対策を行っており、不正アクセスなどによる情報漏洩のリスクは大幅に低減されています。 |
2. 受発注システム「EDI」でできること・できないこと
前章では、EDIについて「企業同士の取引を電話回線やインターネット回線の上で行うシステム」と説明しました。
とはいえこの説明だけでは、EDIによって具体的に何ができるようになるのかイメージできないですよね。
そこでこの章では、以下のようにEDIの導入によって「できること」と「できないこと」を解説していきます。
・【できる】受発注にかかわる書類のやり取りを自動化できる |
それでは、一つずつ見ていきましょう。
2-1.【できる】受発注にかかわる書類のやり取りを自動化できる
EDIの導入により、企業は受発注にかかわる様々な書類のやり取りを自動化することができます。
具体的には、以下のような書類・帳票を電子データとして扱うことが可能です。
EDIの導入によって電子データとして扱うことができる書類・帳票の例 |
・発注書 |
詳しくは「3. 受発注システム「EDI」の導入メリット3つ」で解説しますが、上記のような書類や帳票の手入力が減ることで、入力ミスやデータの重複といったミスの軽減が期待できます。
また、書類のやり取りが電子化されることで、紙やプリンターの使用量が大幅に削減されコストカットにつながります。
2-2.【できる】決まった取引先のみと取引できる
受発注システム「EDI」の大きな特徴の一つは、取引を決まった取引先のみに限定している点です。
似ているサービスとして「BtoB EC」が挙げられることがありますが、「BtoB EC」と「EDI」には以下のような違いがあります。
受発注システム「EDI」 | BtoB EC | |
目的 | 業務の効率化を図る | より多くの顧客に製品やサービスを購入してもらう |
特徴 | 取引先と在庫や納期の情報などを共有できる | キャンペーンやセールの開催など販促活動ができる |
アクセス権 | 許可された取引先のみ | 誰でも |
このように、EDIはBtoB ECとは異なり、事前に登録した取引先だけがログインし取引を行うことができます。
2-3.【できない】不特定多数の取引先には販売できない
EDIは、不特定多数の取引先に対して販売を行うことはできません。
前述の通り、EDIは既存の取引先との売買取引を効率化することが目的です。あらかじめ決められた取引先しかログインできないため、新規顧客の開拓は難しいでしょう。
また、BtoB ECのようにキャンペーンや割引セールのような不特定多数に対する積極的な販促活動を行うこともできません。
そのため、販路の拡大や売上増加を目的に受発注システムを変更しようとしている場合は、BtoB ECなど別のシステムの活用が必要です。
2-4. 【できない】注文変更や在庫の確保などに細かく対応できない
EDIでは売買取引に係る業務が自動化されるため、取引ごとに細かい対応ができないという欠点があります。
例えば、従来の売買取引で可能だった以下のような対応は、EDIではできません。
・発送手続き完了後にサイズ変更の依頼があったので発送を止めて変更した |
EDIではシステムによって自動で処理されるため、それぞれの状況に応じた細やかな対応は難しくなっています。
3. 受発注システム「EDI」の導入メリット
EDIの導入によって「できること」と「できないこと」のあとは、EDIの導入によって企業にどのような影響があるのかをより具体的に解説していきます。
前章で解説したように、EDIを導入すると売買取引に係る業務が自動化されます。その結果、企業には以下のようなメリットがあります。
・ヒューマンエラーが減少するため失注や誤発注を防止できる |
これらのメリットによって、企業は受発注取引を効率化することが可能になります。
それでは、それぞれのメリットを解説していきます。
3-1. ヒューマンエラーが減少するため失注や誤発注を防止できる
受発注システム「EDI」の導入によるメリットの一つが、ヒューマンエラーの大幅な削減です。
これにより、失注や誤発注といった重大なトラブルを効果的に防止することができます。
従来の受発注業務では、電話やFAX、紙の発注書や注文書を使用しているため、以下のようなヒューマンエラーによるトラブルが発生することがあります。
・電話での「言った/言わない」の論争 |
実際に、以下のようにEDIの導入によってヒューマンエラーの低減に成功したケースがあります。
EDIの導入によって業務時間が約70%短縮したケース |
新潟県燕市では、製造業を中心とした多くの地元企業が、電話やFAXなどのアナログな方法で取引を行っていることが長年の課題でした。 課題解決のため、市では産学官金が連携し、専用のEDIシステムを構築・導入しました。 その結果、ペーパーレス化によるミスの削減、業務の効率化、コスト削減といった多くのメリットが報告されています。 実証段階では、参加企業の対象業務時間が平均で約70%短縮されました。 |
このように、EDIの導入によってヒューマンエラーが減少することで、大幅な業務効率の向上が期待できるでしょう。
3-2. 人件費・書面の印刷費などコストカットができる
EDIの導入は、人件費や書面関連の費用削減につながります。
従来の受発注取引では、注文書や請求書などの書類を紙ベースでやり取りするため、以下のような様々なコストが発生しています。
・紙代 |
EDIでは、「1. 受発注システム「EDI」とはどのようなもの?」で解説したように、受発注情報をデータでやり取りするため、これらの費用が発生しません。
実際に、以下の企業ではEDIの導入によってコスト削減に成功しています。
EDI導入によって印刷・郵送費用などのコスト削減に成功したケース |
パラマウントベッド株式会社では、原材料や製造部品発注のために多大な帳票発送業務が発生しており、毎月の印刷・発送作業やそれに伴うコストが大きな負担となっていました。 これを効率化するために、EDIシステムを導入しました。帳票データはPDFで電子化・自動仕分けし、取引先や関係部署にはオンラインで配信する形に変更したのです。 その結果、作業時間は約85%削減され、印刷・郵送費用などのコストも90%減らすことに成功しました。 |
このように、EDIによる作業時間の削減だけではなく、ペーパーレス化による物理的なコスト削減にも貢献しています。
4. 受発注システム「EDI」の費用は数万〜数百万円と大きな幅がある
受発注システム「EDI」の導入を検討するにあたって、メリットだけではなく、費用面も気になりますよね。
EDIの初期費用と毎月の利用料金は、各社のシステムの仕様や料金プランによって大きく異なり、数万〜数百万円と大きな幅があります。
以下の2社の例をご覧ください。
<クラウド型EDIシステム(A)の例>
初期導入費用 | 無料 |
利用料金 | 取引社数1〜5社の場合:3,000円/月 |
保守費用 | 無料 |
<オンプレミス型EDIシステム(B)の例>
初期導入費用 | 約500万円 |
利用料金 | 約20万円/月 |
このように、EDIシステムは契約内容によって料金が大きく変わります。その主な要因として、以下の点が挙げられます。
・システムの形態(オンプレミス型かクラウド型か) |
詳しくは「6. 受発注システム「EDI」を導入するときのポイント3つ」で解説しますが、特にシステムの形態によって、利用料金には大きな違いがあります。
そのためEDIの導入を検討しているときには、具体的な見積もりとあわせて、自社がどのシステム形態を導入するべきか、各サービスの提供会社に相談することをお勧めします。
5. 受発注システム「EDI」を導入すべき企業
ここまでの内容で、EDIのメリットやコスト面での負担など、EDIについて総合的にわかってきたかと思います。
この時点で「果たして、本当に弊社では導入するべきなのだろうか」と悩んでいる人もいるでしょう。
ずばり、受発注システム「EDI」を導入すべき企業とは、以下のような企業です。
・複数の取引先がすでにEDIを導入している企業 |
一つずつ、解説していきます。
5-1. 複数の取引先がすでにEDIを導入している企業
「2-2.【できる】決まった取引先のみと取引できる」で解説したように、EDIでは事前に登録した取引先だけがログインし、取引を行うことができます。
その特性上、EDIを導入している取引先の件数が多ければ多いほど、自社の導入効果は大きくなるでしょう。
例えば、10社の取引先のうち、2社だけがEDIを導入しているケースと、9社がEDIを導入しているケースでは、以下のように大きな差が生じます。
<10社の取引先のうち、2社だけがEDIを導入しているケース>
<10社の取引先のうち、9社がEDIを導入しているケース>
このように、複数の取引先がすでにEDIを導入している企業にとって、EDIの導入は業務効率化効果の大きい施策といえるでしょう。
5-2. 取引先との接点が減少しても影響が出ない企業
EDIは、取引先との接点が少なくても影響がない企業に適しているといえます。
なぜなら、EDIの導入によって受発注に関わる書類のやり取りが自動化されるため、営業担当者同士の電話やメールによる連絡は減少するためです。
「2-4. 【できない】注文変更や在庫の確保などに細かく対応できない」で触れたように、EDIは以下のような取引には対応できません。
・価格や納期などを取引ごとに調整する必要がある ・取引先の細かい要望や仕様変更に対応する必要がある |
このような取引があったり、営業担当者同士の接点が少なったりすることで、関係性に大きな影響が出てしまうような企業はEDIの導入は向いていません。
そのような場合は「7. 取引先との接点を保ちたい企業は「在庫確認」の効率化も手」で説明しますが、在庫確認を自動化するのも手だといえるでしょう。
6. 受発注システム「EDI」を導入するときのポイント
ここまでの内容を読んで、実際にEDIを導入しようと思っても、まず何をしたらいいのか迷ってしまいますよね。
EDIを導入するときに、最初にチェックするべきポイントとして、以下の3点があります。
・主要な取引先のネットワーク通信規格・仕様などを確認する |
どれもEDIを利用するうえで重要なポイントです。
この章では、上記のポイントについてそれぞれ詳しく解説していきます。
6-1. 主要な取引先のネットワーク通信規格・仕様などを確認する
EDI取引を行うには、自社だけでなく、取引先の企業も互換性のあるEDIを導入している必要があります。
なぜなら、EDIは業界ごとに情報をデータ化する手順やルールを定められているためです。
自社と取引先の両方が互換性のあるEDIを採用していなければ、データの送受信ができず、やり取りが成り立ちません。
EDIの導入を検討する際には、主要な取引先が利用しているEDIについて、以下の点を確認する必要があります。
・ネットワーク通信規格(プロトコル) |
EDIの導入前には、まずはこれらの点を確認し、主要な取引先と互換性のあるEDIシステムをピックアップする必要があります。
6-2. オンプレミス型かクラウド型かを選ぶ
「4. 受発注システム「EDI」の費用は数万〜数百万円と大きな幅がある」で解説したように、システムの形態がオンプレミス型かクラウド型かによって、利用料金には大きな違いがあります。
さらに、以下のような違いもあるため、自社に適したシステム形態を検討することが重要です。
<オンプレミス型>
特徴 | 自社でサーバーを構築し運用する |
メリット | ・自社の業務に合わせた柔軟なカスタマイズができる |
デメリット | ・サーバー管理やメンテナンスは自社で行う必要がある |
初期費用の目安 | 数十万円~数百万円 |
月額料金の目安 | (保守費用として) |
適している企業 | ・自社サーバーを持っておりサーバー管理を自社で行える企業 |
<クラウド型>
特徴 | インターネット上のシステムを利用して運用する |
メリット | ・ネット環境があればどこでも利用できる |
デメリット | ・セキュリティ管理もサービス提供会社が行うため、自社でセキュリティ強度をコントロールできない |
初期費用の目安 | 無料〜数十万円 |
月額料金の目安 | (システム利用料として) |
適している企業 | ・費用を抑えてEDIを導入したい企業 |
このように、それぞれ違いがあるため、両者を比較して適した形態を選ぶ必要があります。
6-3. 自社にあった種類のEDIを選ぶ
EDIシステムには、主に以下の3種類があり、用途や事業規模、業種にあわせて適した種類を選ぶ必要があります。
個別EDI | 取引先ごとに通信規格やファイル形式などを決めることができるが、それぞれ個別に設定が必要となる。主に大手メーカー向けの仕様 |
標準EDI | あらかじめ通信規格やデータの仕様が標準化されているEDI。取引先が増えても新しく設定をする必要がない |
業界VAN | 特定の業界に特化した標準EDIで、業界独自の会社コードや商品コードなども標準化されている。 |
ただし、この章で解説した3つのポイントについて、自社で選ぶのは難しいケースがほとんどです。
EDI導入の際には、「6-1. 主要な取引先のネットワーク通信規格・仕様などを確認する」でピックアップしたEDIシステムの提供会社に相談することをお勧めします。
Web-EDIという選択肢もある |
EDIのなかには、ブラウザからデータの送受信を行う「Web-EDI」という選択肢もあります。 一般的なEDIシステムは、EDIシステム提供会社のサポートを受けながら、自社のサーバー上にシステムを構築する必要があります。 一方、Web-EDIではEDIシステム提供会社のWebサーバー上にすでにシステムが構築されています。そのため、以下のようなメリットがあり、比較的導入コストが低いのが特徴です。 ・サーバー構築の手間や費用が不要 ただし、Web-EDIは比較的新しい技術であり、ルールの標準化が進んでいないため、取引先のEDIや自社のシステムとの互換性がないケースがあります。 |
7. 取引先との接点を保ちたい企業は「在庫確認」の効率化も手
ここまで解説してきたように、受発注システム「EDI」とは、商取引の書類のやり取りや受注業務の効率化を目的としたツールです。
そのため、「EDIの導入によって、売上が上がるわけではない」という点には注意が必要です。
前述の通り、営業担当者と取引先との接点自体は減少するため、接点の減少が関係性に影響を与える事業を行っている企業には、EDIの導入は適していません。
取引先との接点を残しつつ、業務効率化を推進したい場合は、ちょうどよい落とし所として「在庫確認」に集中して効率化ができる「WONDERCART」の活用がおすすめです。
先との接点を保ちつつ業務効率化を図るなら「WONDERCART」 |
「WONDERCART」は、商品データを活用して在庫確認や価格の問合せ対応を削減し、業務効率化を促進するBtoB受発注システムです。 WONDERCARTでは、御社がカタログ制作時に整理した商品データを活用し、オンラインで商品一覧を表示することが可能です。 その結果、以下のような効果で御社の業務効率化が図れます。 〇取引先もオンラインで商品検索や在庫確認ができる 〇基幹システムとの連携などニーズに応じたカスタマイズができる 私たちは50年以上にわたり業務用カタログを制作しており、多くの商社の業務フローや課題を理解しています。このノウハウを生かし、より効果的に商社の課題を解決するご提案が可能です。 〇商品データを「画像付き」で公開できる そのため、御社の営業担当者や取引先も迅速に商品データを確認できます。 WONDERCARTを活用すれば、営業担当者と取引先の接点を減らさずに、在庫確認や価格の問合せ対応を削減できます。 取引先との接点を保ちつつ、受発注業務効率を図りたい企業はぜひ、私たちにご相談ください。 |
8. まとめ
この記事では、受発注システム「EDI」について詳しく解説しました。
さいごに本記事で取り上げた内容をまとめます。
〇EDIとは、企業の受発注業務を効率化するために、企業同士の取引を電話回線やインターネット回線の上で行うシステムのことです。
〇EDIの導入によって「できること」と「できないこと」は以下の通りです。
・【できる】受発注にかかわる書類のやり取りを自動化できる |
〇EDIの導入によって、企業には以下のようなメリットがあります。
・ヒューマンエラーが減少するため失注や誤発注を防止できる |
〇受発注システム「EDI」を導入すべき企業とは、以下のような企業です。
・複数の取引先がすでにEDIを導入している企業 |
取引先との接点の減少が関係性に影響を与える企業は、EDIの導入は適していません。
取引先との接点を残しつつ、業務効率化を推進したい場合は、在庫確認に集中して効率化ができる「WONDERCART」の活用もおすすめです。
#受発注 #EDI
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